2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授が率いる研究チームが、遠隔で電波によって電力を送信する「遠隔給電システム」の開発を行っています。
この研究が実用化されると、EVが走行中に充電できたり、宇宙空間で効率よく太陽電池パネルで発電した電力を地上に送信したりと、社会全体に大きなインパクトを与えることになります。
天野教授は「まずは3年後までに、ドローンにワイヤレスで給電できるシステムを実現させたい」と具体的な計画を述べました。
天野教授らのチームでは、青色LED開発のキーポイントとなった窒化ガリウムGaNの結晶化に関する技術を活用しています。
純度の高いGaNの結晶を用いて、電力を制御する電子部品であるパワー半導体の性能を高めることに成功したことで、電力損失などの課題を克服する目処が立ったといいます。
最初の取り組みではすでにドローン向けのシステム開発に着手しており、国内の電機やドローン開発のメーカーと共同でシステムの開発を行っています。
当面の目標は、3年後までに数十センチ離れたところから、3分間でワイヤレス充電を行えるシステムの開発です。
5年以内には、約100メートルの高度で遠隔給電が可能となるシステムに発展させたいとしています。
ドローンは航続距離が短いという問題があり、頻繁に充電しなければなりません。標準的なドローンでは、20キロの荷物を運搬すると、30分前後しか飛べないのが現状です。
こうした問題も飛行中に充電することができれば、航続時間は「無限」といっていいレベルにまでなります。
天野教授は「遠隔給電の技術は、物流や移動手段に革命的な変化を起こす。人々の生活を豊かにすることができる」と意気込んでいます。