シドニーに夏が訪れると、多くの観光客や地元の人たちがビーチに集まります。その数は数百万にものぼるといわれ、隣接する都市に大きな経済効果をもたらします。しかし、ビーチには毎年、招かれざる客も訪れます。それが、サメです。
オーストラリア全域には11,500箇所にものぼるビーチがあるとされ、中にはサメ対策のためにヘリコプターを用いたり、サメがビーチに入ってくるのを防ぐネットを用いたりしているところもあります。このネットはイルカなどサメ以外の野生動物も傷つけてしまうため、環境保護団体からは廃止すべきだとの声が上がっています。
オーストラリアは数十年にわたって、あらゆるサメ対策を行ってきました。しかし、サメによる事故を完全に防ぐことはできず、2017年度だけでも多くの観光客がサメに襲われ、すでに1人が死亡しています。
「ウエストパック リトル リッパー」は当局が考案したサメ監視用のドローンです。特にサメの出没頻度が高いビーチに配備されるドローンで、数十万枚の画像データを学習し、サメを特定することができます。ドローンは海中のサメを認識すると、ライフセーバーに警告メッセージを送信します。
ドローンには特殊なアルゴリズムが組み込まれているので、リアルタイムに映像を分析することができるのです。このドローンは、90パーセントという高精度でサメを正確に識別することができます。人が肉眼で確認した場合、その精度は20から30パーセントほどであることを考えると、このドローンがどれほど正確にサメを認識できるかがわかります。
ビーチの利用客の中には「サメ監視用のヘリコプターがビーチ上空を飛んでいるとはいえ、やはりビーチから離れた沖に出ると怖い。監視にドローンを使用するのは素晴らしいアイデアだと思う」と話す人もいます。
このウエストパック・リトル・リッパーはすでに効果を挙げており、これまでに2頭のサメがドローンにより識別され、人命救助に貢献しました。
また、このドローンはビーチ以外でも活躍する可能性を持っています。たとえば、研究者たちはこのドローン技術を応用して、オーストラリア北部に生息する絶滅危惧種のワニを特定し、野生動物保護に役立てようとしています。