毎年、数万頭ものアフリカゾウが象牙目的の密猟者に殺されています。近年、密猟者を取り締まるためにドローンが有効活用されています。
この4年間、南アフリカ、マラウイ、ジンバブエの国立公園では密猟監視ドローン「Bathhawk」が飛び回り、監視を続けています。2017年12月からはボツワナにも進出しています。
南アフリカの企業、UAV Drone Solutions(UDS)によって製作されたドローンは、最大約25㎞の範囲で撮影映像をリアルタイム中継し、2時間半もの間、飛行を続けます。その後、監視員は公園のレンジャーや地元警察へ監視情報と動画を共有します。
ドローンで撮影した動画は、この地域での密猟に対する有罪判決の決め手にまでにはつながっていません。しかし、専門家はドローンが密猟の抑止力になっていると主張しています。
UDSの共同設立者であるOtto Werdmuller Von Elgg氏によれば、ドローンが稼働する公園では、ゾウとサイの密猟が大幅に減少したか、ほぼ皆無になっているといいます。同氏は、ドローンは夜間の密猟者を発見するのに特に効果的だと言います。
ゾウとサイの密猟の抑止に限らず、野生動物の保護のためのドローン利用は各所で行われています。
英国の生態学者で、2012年に世界中のドローンプロジェクトを追跡する非営利団体Conservation Dronesを共同設立したSerge Wich氏は「本当に興味深い事例がたくさんある」と語っています。
インドネシアのスマトラ島ではオランウータンの生態調査にドローンを使用しています。 アマゾン川のカワイルカや、東ティモールのクジラの生息位置を特定する目的でもドローンが活躍しています。
また、タンザニアではチンパンジーの調査、インドネシアでは熱帯雨林の違法伐採の地図化にもドローンが活かされています。
Conservation Dronesの共同設立者で生態学者のLian Pin Koh氏はオーストラリアでドローンを使って夜間にコアラの調査を行っています。彼らの暖かい体はサーモカメラでくっきりと捉えられます。同氏によると、このカメラを利用すればゴムの木がクリスマスツリーのように輝いて見えるとのことです。
また、クジラの健康状態を監視するためにもドローンが使用されています。2015年、米国のウッズホール海洋学研究所と国立海洋大気局は、ケープコッドのザトウクジラの呼気のサンプルをドローンで採取しました。科学者たちは、健康なクジラの呼気に含まれる共通の微生物群を特定し、呼吸器疾患の原因についての手がかりを得られることを期待しています。
生息地のマッピングや野生生物の発見は比較的簡単ですが、密猟の監視にドローンを使用するとなると難易度が高まります。その理由の1つは、広大な国立公園や遊園地をカバーするほどの飛行時間を確保するとなると、かなりのコストがかかってしまうことです。
宿泊施設や給与、ならびにドローンとサポート車両のコストを含む、1ヶ月間のコストは、現在約2万ドルとなります。しかし、Von Elgg氏はそれでもコストは下がっていると言及しています。そして、ゾウなどの大型動物や、絶滅危惧種の保護に関しては、ドローン利用で得られる恩恵の方が大きいと見られています。