英国では2017年、過去12ヵ月の間にドローンが航空機と50回以上におよぶニアミスを起こしたことから、ドローンの使用を制限しようとする新しい法律が制定される見込みです。
その法律によって、ドローンを購入したい人は事前の登録が必要になったり、警察は犯罪に関係している疑いがあるドローンを、捜査のために着陸させたりすることが可能になります。
現在の英国では、ドローンは欲しい人が自由に購入することができ、警察であっても、ドローンのユーザーを特定することが難しい状況にあります。今後、航空機とのニアミスが続けば事故が起こる可能性が高いことから、英国の議会では「対策として新しい法律が必要だ」という流れになっています。
ランダーソン議員は、「もしも規制されないのなら、現在稼働している数十万台のドローンが原因で重大な事故が生じる危険もあります。政府に危機感が必要です」と語っており、ローサー議員(労働党)は、「ドローンの関係する事故が人命を奪ったり、誰かが重傷を負ったりする可能性を調査・分析する必要がある」と関係省庁に働きかけました。
これを受けて、英国では軍事航空局の協力のもと、ドローンと衝突した場合に航空機やヘリコプターのフロントガラスがどうなるか、脆弱性の実験と分析を行いました。その分析結果は、レディ・サグ議員いわく「憂慮すべき内容」(であり、この問題について行動を起こす必要があるという点で、与野党での意見は一致しています。
一方で政府は、ドローンを英国内でもっと安全に使用できるようにするために、「ドローンを使用するための法的な手引き」(ドローンの安全性を高める啓蒙普及キャンペーン)を発表し、ドローン支援アプリの開発にも着手しています。
ローサー議員の「ドローンによる事故が起きる危険性は、以前と比較して高くなっているのだろうか、それとも低くなっているのだろうか?」という質問に対して、レディ・サグ議員は、「重大な事故はまだ起こっていないものの、ドローンの発売数は日々増加しており、事故が生じる可能性は高いことを認識しています。そのため、ドローンの事故防止の対策が必要です」と述べています。
政府筋は、「ドローンとその持ち主を特定することは難しい面もある」と指摘しています。しかし悪事に使用されているドローンとその持ち主を特定できなければ、犯罪を未然に防いだり、罰を与えたりすることもできません。
対策として、英国ではドローンユーザーの事前登録システムや、電子識別法を導入することを検討中です。この方法が導入されると、ドローンを購入する場合は、製造番号を記した登録IDや本人確認書類などを事前に提出しなければならなくなります。これらによって、ドローンが違法な薬物を輸送する道具にされるといった、犯罪に利用されることを防ぐ目的があります。
また、警察が「犯罪が発生した可能性がある」と見れば、ドローンを強制的に着陸させたり、捜査のためにドローンを押収したりすることができる権限もセットで、新しい法に組み込まれます。