ドローンに嗅覚を搭載?排水処理施設などの臭気を分析する「電子鼻(e-nose)」

更新日: 2023.05.26 公開日: 2021.12.04
img

スペインのカタルーニャ生物工学研究所(IBEC)の研究チームは、人間の鼻と同等の鋭い嗅覚を持つ「携帯型電子鼻(e-nose)」を開発したと発表しました。

e-noseはドローンに搭載可能で、排水処理施設の臭気の強さを予測することなどが可能になります。

これまで排水処理施設の臭気は、施設担当者が手動による測定の上分析するという方法がスタンダードとされていました。

しかし、これではコストや時間がかかるだけでなく実施可能な頻度も低かったため、異常発生時の迅速な対応や悪臭の原因特定などが困難であったと運営者は言います。

同研究所のSantiago Marco氏は、「私は廃水処理施設からおよそ1kmくらい離れた場所に暮らしていますが、その臭いのせいで、時に窓を開けることさえできないことがあります。こういった施設のまわりで暮らしている人にとって、悪臭がいかに生活の質を下げてしまうかということを見過ごしてはいけません」と語りました。

排水処理施設の臭気放出を従来より適切にモニタリングすることを目的に、Marco氏率いる研究チームは人工知能(AI)を活用したリアルタイムモニタリング・データ視覚化を実現するe-noseを開発したのです。

研究チームは排水処理施設から空気を採取し、硫化水素・アンモニア・二酸化硫黄など刺激性の化学物質を嗅ぎ分けるようe-noseにトレーニングを実施しました。

また、バクテリアの活動を確認する指標となる二酸化炭素センサーも搭載。

これにより、人間の嗅覚とほぼ同等の機能を実装することに成功しました。

その後、研究チームはは約1.3キログラムとなるe-noseをドローンに取り付け、2021年1月~6月にスペイン南部の中が過多排水処理施設上空へ送りました。

ドローンは施設内の様々なエリア上空を飛行しながら、10メートルのチューブを介して空気を取り入れ、施設内の空気を分析する実験です。

空気サンプル分析の結果、e-noseにより13回行われた測定の内10回が人間の担当者による評価と一致。

また、研究チームによるとドローンの機動性とAIアルゴリズムによって、時間的・空間的なにおいの濃度もマッピングすることに成功したとのことです。

これらの結果により、e-noseは排水の臭気モニタリングの活用に適していることが判明しました。

Marco氏は、「私たちは結果に非常に満足していますが、今後より多くの検証が必要であり、実際に施設内にて操作をしていくためには、ドローンおよびe-noseをより堅ろうにする必要があるでしょう」とコメントしています。

(画像引用:https://ibecbarcelona.eu/electronic-nose-on-a-drone-sniffs-out-wastewater-plant-stink/)