ドローンなど使い保守・点検高度化へ 東京メトロ、タブレットで業務効率化

更新日: 2021.12.31 公開日: 2021.12.31
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正確な運航・高い安全性で世界から詳細を集める日本の鉄道は、各社の緻密な保守・点検が支えています。

路線維持には欠かせない保守・点検ですが、近年は少子高齢化に伴う人手不足や熟練技術者の減少などの問題が浮き彫りとなっており、対応を迫られているのが現状です。

特にトンネル保守は難しいとされている中、アジア最古の地下鉄「銀座線」を運航する東京メトロでは老朽化も進んでいます。

同社はこうした問題解決の切り札として、最先端のデジタル技術を早期に導入しました。

その先駆的な取り組みは、他社への応用展開も期待されています。

首都・東京に張り巡らされた東京メトロ9路線の総延長は195キロとなっています。

新型コロナウイルス禍の影響を強く受けた昨年度でも、1日当たり平均約500万人が利用した巨大鉄道網です。

その路線の85%は地下のトンネル内にあるため同社にとってトンネルの維持管理は極めて重要な作業となりますが、小西真治・鉄道本部工務部土木担当部長は「トンネル内は作業空間が狭く、足場の設置スペースなどの確保に手間取る。作業は終電後から始発前までで、正味1時間半しか時間がない」と語ります。

過酷な作業環境の中で日常的な点検や補修を行いながら、長期的な保全を実施する必要があります。

しかも、構造物の約60%は建設から50年以上経過、作業人数は減少傾向にあるといった問題から維持管理の効率化が大きな課題となっています。

そこで同社は今年よりトンネルの点検に、自動飛行や伝送機能などIT装備のドローンを導入して問題解決を図っています。

小西氏いわく、ドローンの導入により「徒歩による点検で高所にひび割れなどが疑われる箇所を発見した場合、その場でドローンを使って確認。後日足場を設置して再調査する手間がなくなった」とのことです。

他にも、専用のアプリケーションソフトを搭載したタブレット端末を使用します。

漏水・ひび割れ・浮き・鋼材劣化などの変状を見つけた場合は端末で写真を撮り、位置や変状の内容、程度を入力します。

「従来は写真を撮ってから点検シートへ手書きで記入し、事務所に持ち帰ってパソコンに入力していたため、当時と比べて業務量は5分の1に減った」と小西氏は言います。

同社は今後、デジタル技術の活用による保守の効率化と高度化を加速させます。

データ分析の専門家やドローン操縦士の育成の他、人工知能(AI)を使った保守技術の伝承などを始めます。

小西氏は、「単純作業に費やす時間を減らしつつ、点検や分析を高度化する。効率化によって考える時間を生み出し、将来にわたっての安心・安全を検討、追求していく」構えを示しました。