ドローンによる農薬散布のメリットと導入方法

更新日: 2019.11.26 公開日: 2019.12.02
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農業用ドローンによる農薬散布とは

今やドローンは趣味や空撮用のためだけでなく、様々な産業分野で活躍しています。その代表的な分野が農業です。農林水産航空協会のドローン登録数は、平成28年から年々増えており、多くのドローンが農業分野で活躍していることがわかります。

ドローンを活用する作業には、播種、肥料散布、獣害対策、土地の管理などがあります。その中で主なものは、ドローンに農薬散布用のタンクを積載して上空から農薬を散布する「農薬散布」です。

産業用ドローンメーカーが開発した農薬散布専用のドローンは数多く販売されており、今後ドローンによる農薬散布は、より身近な方法になっていくでしょう。

 

ドローンによる農薬散布のメリットは「農作業の効率化」

ドローンによる農薬散布には、数多くのメリットがあります。それと同時にドローンを活用することは農業が抱える問題の解決にもつながります。

ドローンによる農薬散布のメリット1.作業時間の削減

機体にもよりますが、農薬散布用ドローンの多くは、1haを10分程度で散布し終えます。これは、人が散布装置を背負って作業をおこなった場合と比べて、1/5の作業時間と言われています。

無人ヘリを使った農薬散布も、人の手でおこなうよりも作業効率は高くなります。しかし、無人ヘリはサイズが大きく、重量があるため、準備や移動に人員を割かなければいけません。

ドローンを使用した場合、作業者はドローンを操縦したり、監視したりするだけなので、人数も使う労力も大幅に削減できます。労力が減らせるので、一人の人が作業できる範囲も広くなり、作業の効率化が狙えます。

ドローンによる農薬散布のメリット2.狭い土地や高低差がある複雑な地形の土地にも対応が可能

ドローンは小回りが効くため、狭い入り組んだ場所や、高低差のある地形でも活用することができます。無人ヘリより騒音が小さく、GPS機能や自動航空機能など飛行の安定性が高いので、民家の近くでの農薬散布にも利用できるというメリットもあります。

このようにドローンを利用すことで、非常に大変だった農薬散布が、作業負担の少ない作業へと変わるのです。そして、この作業の効率化は農業が抱える人員不足、高齢化といった問題をカバーすることにもつながるでしょう。

 

農薬散布ができるドローン導入はコストの削減にもなる?

ドローンによる農薬散布のメリットには、コストの削減もあります。少ない人数で作業できることから、人件費の削減になることはもちろんのこと、作業にかかる費用も削減できます。

これまでも無人ヘリを使用して農薬散布をすることで、作業の効率化は行われてきましたが、無人ヘリは導入コストが高いというデメリットがありました。

機体を購入する場合、ヘリの機体価格は500万以上かかります。外注でおこなう場合は、業者にもよりますが10aあたり2,000円から4,000円というように、散布の範囲が広いほど高くなります。年に何回か農薬散布をする場合、毎回その費用がかかり、年間100万円前後かかるというケースも少なくありません。

一方、農薬散布用のドローンは100万円から300万円で購入が可能です。ドローンを所有しておけば好きなタイミングで何回でも農薬散布ができます。

もちろん、新たに農薬散布用ドローンを導入するには初期費用が必要です。しかし長い目でみれば十分に回収が見込めます。

導入コストの一例として、これらの費用がかかったとします。

・本体費用 100万円

・操縦を習うためのスクール費用 20万円

・ドローンの保険 年間1万円

初期費用として120万円、その後保険料として毎年1万円が必要です。

もし農薬費を除いた外注費用が年間50万円だとすると、3年で農薬散布用ドローンの導入費用は回収が見込めます。メンテナンス代を入れたとしても、無人ヘリによる農薬散布を何年も続けていくのであれば、ドローンに切り替えたほうがコスト削減につながるのです

 

ドローンによる農薬散布のために必要な手続き

農薬散布用ドローンのメリットと導入にかかる費用を考慮し、ドローンの導入を考えているのであれば、必要な手続きについても知っておきましょう。

ドローンを活用して農薬散布をするには、ドローンの操縦ができなければなりません。ドローンには、操縦免許がないので誰でも操縦ができますが、農薬散布をするなら、ある程度の操縦実績が必要です。その理由は、改正航空法によるドローン規制に関係しています。

改正航空法では、特定の空域と飛行方法をとる場合、事前に許可申請をするよう定められています。農薬散布の場合、承認が必要な飛行方法である「危険物の輸送」「物の投下」に当てはまります。散布方法や場所によっては、「夜間飛行」や「人口集中地区の上空」などにあたるケースもあります。

この申請をおこなうには、10時間以上の飛行実績と、安全を確保できる技術と飛行計画でなければ承認されません。また散布用タンクを積載したドローンは、重量があり操縦技術が求められます。そのため、ドローン未経験者が農薬散布をするのであれば、ドローンスクールなどでドローンの技術と知識を習得することが望ましいです。

他にも法規制ではありませんが、農薬散布をするなら農林水産航空協会での手続きを踏むことがすすめられています。それには、農林水産航空協会での技能認定、機体登録、事業計画書の提出が含まれます。

また農業の生産性向上のために各自治体でもドローンの活用が推し進められています。自治体によっては厳守すべき基本方針を出していることもあるので、事前に確認するようにしましょう。