NASAは原子力ドローンで土星の衛星タイタンを目指す

更新日: 2019.09.19 公開日: 2019.09.19
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「ニュー・フロンティア計画」をご存知でしょうか。NASAが2006年から進めている宇宙探査ミッションで、太陽系の惑星の調査を目的としています。

 

2006年に打ち上げられた無人探査機「ニュー・ホライズンズ」は冥王星、2011年の「ジュノー」は木星、同じく2011年の「オシリス・レックス」は小惑星ベンヌの探査を目的に、現在も運用中です。

 

NASAは2019年6月、4番目となる新たなミッションを発表しました。「ドラゴンフライ」と名付けられたドローン型の宇宙機を、土星の衛星タイタンに送り込むというものです。

 

ドラゴンフライは8枚の回転翼を持つ完全自律飛行の宇宙ドローンで、コンパクトカーと同じくらいの大きさです。原子力を動力源とし、衛星タイタンの上空でホバリングすることができるとされています。

 

ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所でこのミッションの主任調査員を務めるエリザベス・タートル氏は、このミッションは決して無謀なものではないと語ります。ドラゴンフライに使用されているのは、それほど新しい技術ではないからです。

 

8枚の回転翼を持つドローンは、最近ではアマゾンでも販売されています。自動運転、自律飛行のテクノロジーも目新しいものではありません。動力源に原子力を用いるのは簡単ではありませんが、現在火星を調査中の探査車「キュリオシティ」の原子力電池と同じシステムを使う計画です。このように、ドラゴンフライに使われる技術は、すでに他の場所で実現しているものなのです。

 

とはいえ、火星の地上を走る「探査車」であるキュリオシティと、タイタンの周りを飛行する「ドローン」であるドラゴンフライでは、条件が異なるため、一筋縄では行かないでしょう。

 

このミッションの宇宙船システムエンジニアであるドグ・アダムス氏は、次のように話します。「ドラゴンフライに関わる人は、はじめは皆”冗談はよしてくれ、こんなミッションを実現できるわけがない”と口を揃えます。しかし、徐々にこれが大いに実行可能なものであると気付くのです。さらに、今後期待される地球用ドローン技術の発展が、ドラゴンフライの実現可能性をさらに高めます」

 

NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、約10億ドルが投入されるこのミッションを発表した際、「この革命的なミッションは、2、3年前には想像もできなかったこと」と述べています。

 

ドラゴンフライの目的地として、衛星タイタンが選ばれた理由は主に2つあります。まず、タイタンが太陽系の中で最も地球に似た天体であることです。タイタンを調査することで、地球でどのように生命が誕生したかを探る手がかりを掴めるのではないか、とタートル氏は考えています。

 

次に、タイタンの重力が地球に比べて非常に低いことです。これは、ドローンが上空を飛び回るのに好条件であると言えます。タイタンのような環境では、探査車よりもドローンの方が圧倒的に使い勝手がいいのです。

 

ドラゴンフライは2026年に地球を飛び立ち、2034年にタイタンに到達する予定です。

 

(画像引用:https://www.npr.org/2019/09/17/760649353/meet-the-nuclear-powered-self-driving-drone-nasa-is-sending-to-a-moon-of-saturn)