ドローンを使って農薬散布をするのに資格は必要か

更新日: 2021.11.23 公開日: 2020.04.16
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ドローンを使った農薬散布のメリットは非常に大きいため、多くの農家が農薬散布用ドローンの導入を考えています。そこで生じる疑問のひとつが、ドローンを使って農薬散布をするのに資格は必要なのかどうかというものです。今回はドローンを使って農薬散布するための資格の必要性について徹底調査します。

目次

ドローンで農薬散布を行うための必須資格はない

そもそもドローンの操縦に関しては、車の運転のように免許証を取得しなければならないと言ったような法律は存在しません。免許や資格がなくても、誰でもドローンの操縦を行うことが可能です。

とはいえドローンの安全運用のための知識を得ることを目的とした民間のスクールや教習所が存在します。コースを修了し試験に合格すると認定資格証を発行してもらうことができ、ドローン操縦士としての技術や知識を第三者に証明することができます。

ドローンによる農薬散布のような特殊なケースでも、特定団体の必須資格と言うものはなく、一定の技能や飛行経歴を証明することができればドローンを使った農薬散布を行うことができます。その際には農薬散布用に販売されている一般のドローンを使用することが可能です。

2019年7月30日をもって技術指導指針が廃止され、今まで必要だった農水協(農林水産航空協会)による認定制度も必須ではなくなりました。この規制緩和により、ドローンを使用した農薬散布の手続きが簡素化され、より多くの農家でドローンを導入することが可能になりました。

必須資格なしでドローンを使った農薬散布が行えるとはいえ、農薬散布は「危険物輸送」「物件投下」に該当するため、航空法に従ってドローン飛行の承認申請を行わなければなりません。その際に原則として10時間以上の飛行経験が問われるので、全くの初心者がいきなり農薬散布を行えるというわけではありません。

さらに、農薬取締法に引っかからないためにも、農薬に関する知識が必要なことは明らかです。「空中散布ガイドライン」に精通し、農薬の安全な使用を心がける必要があります。

 

農水協認定機の使用には資格が必要

農薬散布におけるドローンの正しくて安全な使用のために、農水協(農林水産航空協会)が存在します。農水協が定める性能試験に合格したドローンは農水協認定機として販売されていますが、農水協認定機の使用には資格が必要になります。

例えば、DJI社の「AGRAS MG-1」を使って農薬散布をしたければ、農水協認定の「産業用マルチローターオペレーター教習」を受講しなければなりません。基本的に5日間のコースで、費用は22万円(税込)になっています。

マゼックス社の「飛助MG」も農水協認定機なので、農水協認定の教習所で資格を取る必要があります。教習所にもよりますが、3日間のコースを約18万円で受講することができます。

それぞれの認定機によってメーカーが指定する認定教習所がありますから、予算に応じて利用したい認定機を決定してからそれぞれの販売店や教習所に問い合わせることができるでしょう。

農薬散布の目視確認は困難で、散布試験を行ってみると散布ムラが著しかったり散布幅が4mに達していなかったりするケースが発生することがあります。散布性能の確認がされていないために、農薬の残留値オーバーになってしまうと、流通ができなくなり農家にとっては大問題となります。

教習所に通う時間とお金がかかりますが、認定機を使用することには大きなメリットがあるということが分かります。

 

ドローンによる農薬散布のメリットや注意点

農業分野における大きな課題が、人手不足と農業従事者の高齢化です。広大な農地に農薬散布を実施することは簡単なことではありません。しかしドローンを利用することによって大幅に時間を短縮させることができ、人手不足という課題をクリアすることができます。

従来の無人ヘリコプターを使用した農薬散布に比べて、ドローンは少ない購入費用で農薬散布を実施することができます。騒音が少ないことや中山間地域でも農薬散布ができるというのもドローンのメリットです。

作業員の体力的負担を軽減し、短時間で農薬散布を行うことができるという点で、ドローンの導入はこれからもますます拡大していくことが予想されます。農薬散布以外にも、種まきや受粉、圃場センシングや鳥獣外被害対策など様々な分野での農業用ドローンの普及が期待されています。

ドローンを始めとする最先端の技術が農業分野で活躍するようになると、若者の農業離れを食い止めるきっかけになるかもしれません。

必須資格がなくメリットの多いドローンを使った農薬散布ですが、全くの初心者であるという場合は、飛行経験がないため申請に通らないという注意点があります。その場合はドローンスクールに通って技術を磨くことができるでしょう。

性能確認がされていないドローンを使うと、散布ムラによる残留値オーバーやドリフトが起こるかもしれないので注意が必要です。農水協認定の教習所で技術と知識を身に着け、認定機を使用することができれば、安心・安全のもとにドローンによる農薬散布を行うことができるでしょう。

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