ドローンによる果樹園の自動農薬散布がこれから普及していく?

更新日: 2021.11.22 公開日: 2020.07.28
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ドローンによる農薬散布が少しずつ広まっていますが、通常の田畑だけではなく果樹園への散布も可能になりつつあります。今回は、ドローンによる果樹園の自動農薬散布の実現に向けた動きについてご説明します。

目次

中国でドローンによる完全自動果樹園が実現する?

農業大国の中国では農業にドローンが積極的に活用されています。そして、昨年4月、自動で障害物などを避けたり、雑草と果樹を見分けたりできる画期的なドローンが発表されました。識別できる果樹の種類は20以上もあるとのことです。

このドローンは、「フルーツツリーモデル」と呼ばれるもので、中国の大手ドローンメーカー「DJI」が開発しました。

中国の多くの果樹園では、果樹の植え付けが不均等で、高さもバラバラです。また、果樹園の周辺には建物や電柱などの障害物がたくさんあります。さらに、果樹園には数多くの種類の果樹があり、地形も複雑なので、雑草と果樹を見分けるのは容易ではありません。

このような事情で、果樹園に対してドローンを活用できる場面はまだ非常に少ないと考えられていました。

しかしながら、「フルーツツリーモデル」には最先端の人工知能が搭載されており、数十万の果樹園の写真を学習させた結果、1分以内に約80haの面積の土地の完全な環境識別を完了させることができるようになりました。前述の通り、20種類以上もの果樹を見分けることができます。

こうしたインテリジェンス機能を持つドローンが普及していけば、必要な果樹だけにピンポイントに自動で農薬散布できるようになり、環境への負荷軽減やコスト削減につながることが期待されています。

 

日本でもドローンによる果樹園の自動農薬散布が広まっていく?

日本でも、果樹園の農薬散布にドローンを活用していこうという動きが見られています。

例えば、農業用ドローンで「DJI」を追い抜く勢いのあるドローンメーカー「XAG」(旧「XAIRCRAFT」)は、2017年に日本法人の「XAG JAPAN」(旧「XAIRCRAFT JAPAN」)を立ち上げ、2018年にはドイツの大手農薬メーカー「バイエル」と提携しました。そのXAGが開発したドローンを日本に導入しようという動きがあります。

元々、急斜面にある果樹園などでは手作業による農薬散布が大変な労力を要していましたので、機械化への要望が多くありました。そして、無人ヘリコプターでは技術的に散布が難しいケースもあるため、何か別の方法での機械化が望まれていました。

そこで注目されたのがドローンです。例えば、「XAG」の「P20」(現在は上位モデルの「P30」も登場)は、測量技術の「GNSS RTK」によって圃場を正確に測り、クラウドに保存された測量データを基に航行しながら全自動で農薬散布を実施することができます。

このような自動飛行ができるドローンの実用化が進めば、果樹園の農薬散布を自動化する農家が少しずつ増えていくことでしょう。

 

ドローンによる果樹園の農薬散布の今後の展望

昨年、農薬散布用ドローンの導入の妨げになっているという声が上がっていた規制が緩和されました。

緩和された規制の1つに「使用できる農薬」があります。以前は、ドローンによる農薬散布の場合、「無人ヘリコプターによる散布」のために登録されていた農薬のみを使用できました。でも、そもそも無人ヘリコプターによる山間部の果樹への農薬散布は技術的に難しかったため、果樹用の農薬で登録されていたものは多くありませんでした。

でも、昨年の規制緩和により、「地上散布」のために登録されている農薬も簡単な申請をするだけでドローンに使用できるようになりました。以前は、地上散布とドローンによる散布では希釈倍率などが異なるため、残留農薬の安全性等を試験で改めて確認する必要ありましたが、そのルールが緩くなったのです。今では、既に登録されている地上散布用農薬の希釈倍率をドローンに適した濃度に見直す変更登録申請を行えばよく、残留農薬試験は不要となっています。

このような背景もあり、果樹園などの農業の現場でドローンが活用される場面は増えていくと考えられます。

今回の記事では、ドローンによる果樹園の自動農薬散布の実現に向けた動きについて見てきました。その動きは着実に広まっています。もし、実用化が進めば、農家の方々の体力的な負担やコストは確実に減っていくことでしょう。今後の動向に注目

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